あづみのうか浅川

あづみのうか浅川

安曇野市堀金地区は、日本百名山の一つ、常念岳の麓に位置する。錦秋という言葉がよく似合う、見事な田園風景の広がるこのエリアに、あづみのうか浅川はある。江戸時代より代々農業を営み、現在の当主・浅川拓郎氏で14代目を数える、歴史ある農家だ。

米作りへのこだわり

長野県は日中と夜間の気温差(日較差)が大きい。リンゴやブドウなどの果樹や米穀類は、日較差が大きいほど、その実に糖分や栄養分を溜め込む。このことが米の甘みや濃い味わいをもたらすと同時に、しっかりとした歯ごたえや、もちもちとした食感の良さに繋がる。

「田植えの際、イネの株と株の間を1尺(30cm)開けるのが一般的ですが、うちでは一尺一寸(33cm)開けています。通常よりも一寸余分に間隔を取ることで、イネがのびのびと生育します。それも米の美味しさに繋がっていると思います。」

また、通常の米作りに使用しているのは、米ぬかと菜種かすを使用した有機質肥料。これは、先代、先々代と受け継がれてきたものだそうだ。
先代が米作りに従事していた頃は、化成肥料が「金肥」と呼ばれ、有難がられた時代。その中にあって、昔から変わらぬ肥料にこだわって米作りを伝承してきた先代のやり方を、今も実践している。

自然栽培への挑戦

あづみのうか浅川では、2020年から一部の圃場で自然栽培の米作りを始めた。自然栽培の圃場では、有機質も含め一切の肥料・農薬を使わずに栽培を行う。
自然栽培の米作りを始めたきっかけは、人にも自然にも無理のないやり方で米作りが出来ないものだろうかと思うようになったことだという。

「長年米作りに携わってきて、自然の恩恵や厳しさ、そして僕ら人間も自然の一部であることを実感します。人間の欲望や都合で米をたくさんとれるようにするのではなく、その土地がもともと持っているパワーを分けてもらったり、色んな生き物の持ちつ持たれつの関係性の中で自然の恵みを皆で分かち合うような米作りを目指したいという思いが、自然と芽生えてきました。」

自然栽培を始めて3年、様々な試行錯誤があった。肥料をやらない分、一反あたりの収量も通常の1/3程度だという。
2022年は、除草の手助けになればと太陽光発電で稼働する小型除草機を導入。しかし、一概に機械に任せれば済むというものでもないそうだ。

「小型除草機は、田んぼの土の表面を攪拌して水中を濁らせることで雑草を抑制する原理なのですが、うちの田んぼの土は粒が細かく砂状。攪拌しても比較的すぐに濁りが収まってしまうことが分かったんです。手を抜きすぎてはいけないと痛感しました。

毎年試行錯誤ですが、ただ明らかに自然栽培の田んぼでは生態系が変わってきています。病害虫の発生も今のところありませんし、他の田んぼでは見ないような藻類も見かけるようになりました。
僕の理想とする米作りが、自然栽培という手法を通じて少しずつ実現できてきているのが嬉しいです。」

お米を使った商品開発

あづみのうか浅川では、自家栽培のお米を使った加工品の開発・販売も行っている。
例えば玄米粉を使ったパンケーキミックス。女性パートスタッフの発案で商品化に至った商品だ。
原材料は玄米粉、きび砂糖、ベーキングパウダー(アルミニウムフリー)のみ。一般的なパンケーキミックスで使用している乳化剤や香料は添加しない。
米粉ならではのモチモチ感と共に、玄米の香ばしさと、きび砂糖のやさしい甘さが調和する。日本人の主食であるコメを使っているからか、ホッとする味だ。
自家製のもち米を使った揚げ餅もリニューアルし、塩味と醤油味は添加物不使用で自然の味を生かすようにした。お米の美味しさを感じられる食べ飽きない味で、一つまた一つ...と手が伸びる。

安曇野の田園風景を守る

あづみのうか浅川のポスターを見ると『安曇野の田園風景を守る』というキャッチコピーがまず目に入る。確かに、安曇野の田園風景は美しい。北アルプスの雄大な山々、清冽な水。春夏秋冬それぞれに自然の織り成す美しさを目の当たりにできる。しかし、なぜ商品であるコメを宣伝するよりも先に「安曇野の田園風景を守る」なのか。ここ安曇野に対する浅川さんの思いの源泉はどこにあるのだろうか。

「この辺は元々、米作りの出来る水がなかったんです。安曇野というときれいな水のイメージがありますが、北アルプスからの伏流水は、ここより低いところへ流れて行ってしまう。それが江戸時代後期になって、木曽から流れる奈良井川から取水して、全長15kmもの灌漑用の用水路を作った。これが『拾ヶ堰(じっかせぎ)』です。しかも、全長15kmあって、落差はたったの5m。これは3km進むごとに1m下がるような勾配を付けたからです。
そんな高度な技術を、重機がない時代にすべて人の手で、7000名弱の農民が協力して、農閑期の真冬のたった3か月で完成させたそうです。それまではこの辺りは恐らく雑木林だったと思うんですが、拾ヶ堰が出来たことによって、安曇野で米作りが出来るようになった。ものすごいことですよね。」

言われてみれば、長野県の名物である蕎麦もおやきも、どちらも原料は米ではなくそば粉、小麦粉である。安曇野の美しい田園風景は、決して最初からそこにあったわけではなく、先人たちの築き上げた財産そのものなのだ。

 

あづみのうか浅川さんのお米はこちら

▶︎自然栽培米(2KG) あづみのうか浅川  無農薬・無肥料栽培のコシヒカリ

 

 

あづみのうか浅川
長野県安曇野市堀金烏川4162-1

 

 

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