のぐちファーム|安曇野市で無農薬栽培への挑戦

のぐちファーム|安曇野市で無農薬栽培への挑戦

今から4年前、2017年の春、私は自然農法を学ぶため東京から松本に移住した。自然農法の研修後、半農半Xのライフスタイルを目指して畑を借りたものの、まったく両立できず、農のほうを諦めたという経緯がある。だから、自分と年の近い若手農家さんには話を聞いてみたいと思っていた。そんなときに紹介されたのが、安曇野で「のぐちファーム」を経営する、野口雄貴さんだ。明るく爽やかな笑顔で迎えてくれた野口さんは、「農カード」にいたら話題になりそうなイケメン若手農家である。

無農薬栽培への挑戦

「就農して今年で6年になります。僕の祖父が元々ここに住んでいて、この地域に根差した農家でした。でも僕自身は生まれも育ちも東京で。農家になるまでは、町工場で働いたり、トラックの運転手やったり、いろんな仕事をしてきました。移住を考えたのは結婚して子どもが生まれたのがきっかけで、祖父のいた安曇野への移住を決めました。

せっかくだったら東京じゃ出来ない仕事をしてみようと思って、移住後しばらくは堆肥を作る会社で働いていたんですが、その堆肥のユーザーである農家にも段々と興味が沸いてきたんです。で、しばらくしてセロリ農家で1年間研修を受ける機会に恵まれ、研修修了後、祖父が元々持っていた農地を使わせてもらう形で新規就農しました。

でも、1年研修を受けたとはいえ、ほとんど知識もスキルもないものだから、就農初年は散々な結果に終わりました(笑)。人間の食べるものに農薬かかってるなんておかしい!と思って、無農薬での栽培に挑戦したんですが、ほとんど虫に食われてしまって。そもそも商品として出せるような代物ではなかったり、出せたとしても全然売れませんでしたね。理想と現実の違いや、自分の甘さをまざまざと見せつけられて、途中、やっぱり心は折れました。でも、やっていくうちに段々と、農薬を使わなくても作りやすいものと、きれいに作るにはシビアな管理が必要なものとがあることが分かってきたんです。」

自分なりの戦い方

農業には、自国民への食料供給を確かにするという極めて重要なインフラ的側面もあるし、一方で、農薬や化学合成肥料を使わずに栽培したものを食べたいというニーズを持った消費者もいる。半農半Xを諦めた身としては、どちらかに振り切ることなく、うまくバランスをとっていくことが大事(そうすることで持続可能性がある)のではないかと思うのだけれど、その点、農家さんは実際どう思っているのだろう。

「今、うちの野菜には3つの柱があります。一つはセロリやナス、ニンジンなど、スーパーなどの流通に乗せるもの。これはある程度大規模に作っています。もう一つは飲食店さんへの納入。そして直売。この3つの柱で経営しています。

完全に無農薬の栽培、自然農法で野菜が作れることは、もちろん理想ではあるけれど、それにこだわるあまり何かを犠牲にするというのは、僕には少し難しかった。だからといって、完全に諦める必要もなくて、そのバランスをどうとるかというのが『戦略』、戦い方の工夫だと思います。

就農して6年、少しずつ経験を積んできたことで、『観察』が出来るようになりました。この時間帯に水をやるとどうなるかとか、葉っぱの色の違いとか、作物をよく観察して、何が足りないかを推測したり、手当てしたりすることが『品質』という結果に結びつき、お客さんの満足に繋がる。農薬や化学肥料の有無に関わらず、農家として自分の観察眼を鍛えることが必要だと思っています。」

これからについて

「僕自身、安曇野という土地をすごく気に入っているので、多くの人に来てもらいたいと思っています。コロナが収束したら、収穫体験やBBQのようなイベントもやりたい。また、去年からは先輩農家に誘ってもらって農産物卸会社の運営にも携わるようになり、新しい動きが広がっています。

安曇野の中でもここ塚原地区は、うち以外に専業農家がありません。高齢化で農業をやめていかれる方が多く、後を継ぐ人もいない。だからこそ、専業農家である僕が規模を大きくできるということ自体が、地域の農地を守ることにも繋がっていくと思うんですよね。SNSやインターネットを使った情報発信にも力を入れていますし、卸会社での活動も通じて、若手農家として安曇野の農業を盛り上げていきたいと思っています。」

ご自身のInstagramでも積極的に情報発信している野口さん。今の時代は農家もデジタルツールは絶対使うべき、と語っていたのが印象的だった。

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