濱りんご|あっぷるぼういず

濱りんご|あっぷるぼういず

松川村は、長野県の北西部に位置する人口1万人弱の村だ。安曇野と大町の間にある小さな村だが、個人的には松川村の「抜け感」が気に入っている。ものすごく有名というわけではないけれど、いいものがある。着飾らない感じが好きだ。

松川村にはりんご生産者団体「あっぷるぼういず」がある。村のりんご農家9軒で構成され、高品質なりんご作りの追求と産地の発展を目指し、日本各地での販売や海外への輸出を行っている。あっぷるぼういず会長であり、濱りんご代表である濱嶋奨さんに話を聞いた。

「私自身は、2015年の4月に就農したので、今年で7年目になります。りんご農家になる前は、愛知県で経営コンサルティングの仕事をしていたのですが、その仕事で白骨温泉を訪れたのがきっかけとなり、長野県に移住しました。移住してしばらくは、ラフティングやスキーといったアウトドアの仕事をしながら、春と秋にりんご農家でアルバイトをしていました。あるとき神奈川県藤沢市に対面販売に行ったのですが、そこで『りんごって可能性あるんじゃないか』と思ったのが、農家を目指したきっかけですね。生産者と直接対話ができることは、ブランド化に繋がると思ったんです。」

りんご作りへのこだわり

「これは私のこだわりですが、まず除草剤は一切使用しません。というのも、果樹園の下草(したくさ:りんごの樹の根本の植生)には、害虫の天敵を含む様々な生物が生息し ていて、この下草の管理をきちんと行えば、害虫防除のために殺虫剤を撒く回数を減らせるからです。とはいえ、完全に無農薬にしたがために周囲への影響が出るのは問題です。だから、出来る限り環境負荷が減るように、減らせるところはどこかと考えて農薬を減らしています。除草剤不使用のりんごは、皮のエグみが少ない感じがありますね。
もう一つのこだわりは、りんごの苗木を植えた後は、有機のものも含め肥料はやりません。樹が元々持っているエネルギーを引き出せば、十分おいしい果実がとれます。」

2年前に植えたりんごの苗木。

私はかねがね、スーパーに並ぶいちごの粒が、年々大きくなっていくことに違和感を抱いている。大きけりゃいいってもんじゃないでしょ、と。

「確かにそういう考えもありますね。ただ、それも何を作るかによって少し違います。例えば、濱りんご園2.8haのうち、15aがもも畑、残りがりんご畑なんですが、ももは摘花(てきか:実をならせる花を選び、それ以外を間引くこと)を普通より多めに行います。そうすると、なる実の個数は減りますが、その分一つ一つを大きく育てることができます。私は、ももって"果汁の食べもの"だと思うんです。ももの湛えるあのみずみずしい果汁、想像しただけで居ても立ってもいられなくなりますよね。実の大きいほうが果汁も多く蓄えられるので、だからももは、大きくなるように栽培しています。りんごは逆で、日持ちがして味がボケづらいのは中小玉です。」

「ももにもりんごにもに言えることですが、熟すタイミングがズレてきているように思いますね。花が咲くのが早くなりました。雨の降り方も、最近は一気に降って干ばつが続く...みたいな感じで、50年後は松本平でりんご栽培できなくなっているのではとも思います。実際、飯田の方ではりんご栽培からなし栽培に変わってきているようです。気候や環境が変動していく中で大事なのは、もっとよく『観察』して、今何をしなきゃいけないかを考えることだろうと思います。栽培だけでなく、売り方もそうです。市場の要求に合わせるのではなく、自分たちがオーナーシップをもって出荷できるような体制・仕組みを作るのです。」

「普通樹(ふつうじゅ)」栽培のりんごの樹。わい化栽培に比べて収穫や栽培管理に時間と手間がかかるが、わい化と普通樹とでは異なる味わいがあるという。

おらほのりんごをたべてくりゃ

あっぷるぼういずの紹介リーフレットの表紙には『おらほのりんごをたべてくりゃ』とある。恥ずかしながら私は、松川村でこんなにりんごを作っていることを知らなかった。

「あっぷるぼういずを発足したのは2014年の秋。最初の活動は、岐阜市での対面販売でした。きっかけは単純で、行政のお膳立てに乗っかるのではなく、自分たちでも出来ることをやってみよう!と考えたことです。その後、石川県や愛知県でのイベントに参加したり、2018年からはシンガポールへの輸出も行っています。現在、松川村のりんご畑の総面積は約38haですが、そのうち23ha(約6割)があっぷるぼういずメンバーの畑です。」

「あっぷるぼういずのりんご販売の特長は、出荷2日後には販売店の店頭に並んでいる、という点です。一般的なスーパーの流通網に乗せるよりもはるかに短時間で済み、買い手も新鮮なりんごを手にすることができます。それを実現するために、あっぷるぼういずとして集荷場を持ち、独自に陸送便と契約しています。折り畳みコンテナ1個単位で配送を受けてくれるので、収穫量が少ないときでも出荷できる→新鮮なりんごを買ってもらえる訳です。
あっぷるぼういずの販売網の独自性は、競合の商品が行き届かないところに持っていっているということ。そのお陰で、適正に評価してもらえるところに出荷するという戦略をとることが出来ます。」

行動することで見えてくること

「濱りんごの工夫としては、新聞屋さんの運送網を利用させてもらっています。新聞配達の空き時間に、りんごを届けてもらう。コロナ禍で物流需要が高まっている今、どうやってモノを運ぶかにも工夫が必要です。ではどうすれば工夫できるか?私はとにかく行動することだと思います。行動している人に声がかかるし、壁にぶつかったとしてもいずれ道は見えてくる。手を動かさない人に良い仕事は出来ません。

とはいえ、何かを続けるということには体力が必要です。全速力で走り続けていては息が切れてしまいますから、没頭しすぎない、という視点も必要だと思いますね。あっぷるぼういずも然りですが、自分一人では出来ないことも、何人か集まってやれば出来るようになることだってあります。そういう意味では、松川村に移住してきてくれる人たちや、松川村で就農したいという人たちへのサポートにも力を入れています。移住者同士のつながりと、外とのつながりを同時に持てる居場所を作り、次の世代を育てていけたら良いなと思っています。」

濱りんご
長野県北安曇郡松川村5651-218

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