8clotH -エイトクロース- 「永く使うこと」にかける想い

8clotH -エイトクロース- 「永く使うこと」にかける想い

とある古着屋に、80年代のヴィンテージ古着の修復(リペア)を依頼したことがあった。正直かなりダメージがあり、もうダメかと思っていたが、返却されてきた時に、想像以上の修復を遂げていた。あまりの完璧な仕上がりに驚いた。 
その時、一体どんな人がリペアをされたのか、興味を持った。
連絡をとったところ、安曇野市豊科の工房 "8clotH(エイトクロース)" で服飾業を営んでいる小池 真樹(こいけ まさき)さんだと分かった。
小池さんの出身は上諏訪で、松本の専門学校で学び、その後上京して就職。結婚のタイミングで松本・安曇野で活動するようになった。

8clotHのシンボルマークやロゴ

8clotHさんの八や山をかたどったロゴは、小池さんをよく知る知人に作成してもらったそうだ。

「僕は、やりたいことが理解されにくいんです。そこを一般の人にも分かりやすく形にするようなデザインのお仕事をされている知人がいたので、是非ということでロゴ作成等をお願いしたんです。
『服の百屋』という意味を込めたり、『末広がりの』とか『安曇野の』とか、いろんな意味を伝わりやすく考えてくれたのでとても気に入っています。」

オーダーメイドへのこだわり

「僕が一番やりたかったり提案したいのはオーダーメイドです。オーダーなのでその人の背景や年齢・性別・好き嫌いとか、合う・合わないとか、利き手とか肩傾斜の違いとか、仕事は昼か夜か、どのシーンでよく着用されるのかなど、すごくパーソナルな部分を加味した上でデザインというものを決めて行きます。」

「そこまで掘り下げたものを届けたいのですが、掘り下げれば掘り下げるほど時間がかかってしまいます。頑張っても1ヶ月に2 着ぐらいしか作れなく、それだけでは正直事業としては難しいのです。
だからといって仕入れをして安く売るとかそういったことをせず、オーダーメイドで大事にしている部分や、8clotHのコンセプトに沿ったリメイクやお直しとかオリジナル商品の物販などを展開し、いろんな方面で間口を広げたいと思っています。
本当はオーダーメイドだけをずっと1本でやれたらいいなという思いもありますが、

今もオーダーメイドは9ヶ月待ちぐらいの状態で、どうしても時間がかかるものなのです。
でもそこで妥協してしまうと自分が本当にやりたいことができなくなり、結果的に差別化もできず、他社と同じになってしまいます。そうするとうちのコンセプトとはズレてしまうのです。」

その人に合った提案をする ”カウンセリング” が最も大事

「最初は実際に会ってカウンセリングをする事、そこに一番時間をかけたいです。カウンセリングで要望を伝えてもらって、その上でこちらから生地やディテール(詳細)の提案をさせていただきます。
その提案力が一番うちの売りなのかなと思います。」

「正直、縫製やパターンメイキングが上手い人はいくらでもいます。量産というのは効率重視で、いかにたくさんの商品を早く縫って売るかを考えられています。ですが、そうじゃなくてわざと手間はかかるけど、1着にかける思いだったり『8clotHじゃないとできない』という部分を意識してやっています。
そう考えると打ち合わせが一番大事で、いかにお客様の想いを形にして届けるかを大切にしています。」

「永く使うこと」にかける想い

「元々一番最初に働いていたアパレル会社は、量産型で服を作り、全国展開で卸を行っていました。会社自体は少人数でいろんな事業展開をしていて面白かったんですが、自分で書いたパターンで工場が縫って出来上がった商品を、気持ちよくお客さんに勧められなかったんです。
当時は人気があるブランドでしたが、同じ予算があるんだったら『あっちのブランドの方がいいですよ』みたいに思ってしまったのです。
そんな状態で売り上げを残して上司に褒められるのがすごく嫌でした。」

「20代前半ぐらいの時から 普段自分で着る服を自分で作り始めていたので、その時から、『本当にいい服って何だろう』って考え始めたんです。
そんな時に出た答えが、今に繋がる『オーダー』かなと。
良い服って何だろうって考えた時に、当然デザインだったり単純に着た時に気分が上がるとか要因は様々だと思うんですけど、1番は8clotHのコンセプトでもある『永く着られること』だと思います。
これは物に関して全般に言えることだと思いますが、結局オーダーメイドで数万、数十万円で作った服って、何十年も着ることができるので、日割り計算したらとんでもなく安い計算になるんです。
サイズもぴったりだし、好みにも合うし飽きて捨てるっていうことも少ないだろうし。そう考えたら長期投資に似てるような気がするんです。

もっと言うと、ゴミになるところまで考えたり、安くてすぐ捨てる服がダメっていうわけではなく、永く使っていて愛着のあるものに囲まれている生活が素敵だなって思います。」

「この考え方は、僕の母校でもあり、前職で働いていた松本にある専門学校の講師時代の経験が大きいです。
東京にいた時にも専門学校の講師をやっていましたが、この松本の専門学校は全校で生徒が30人ほどしかいないのに先生が十何人もいるんです。生徒3人に先生 1人、みたいな感じですごく手厚いんです。そこの校長・理事長2人の考え方が『1対1』をすごく大切にしていました。
東京を出たばかりの頃はなんとなく『量産ってやだな』っていう考え方だったんですけど、そんな学校で6,7年講師として働かさせていただいた経験が、その考え方を成熟させて今の考え方に至るというような感じです。
その専門学校で講師として働いたのは僕の人生にとってすごく大きかったです。」

「今、売るという事業の他に洋裁教室もやっています。プロの方から一般の方までいろんな方に参加していただいてるんですが、洋裁教室も8clotHっていうフィルターを通すと、1対1なんです。
人それぞれやりたいことは違うので、量産教育をしないで、1対1で受け答えをしています。

もう一つ、お金持ちの人が貧しい国や人に寄付するのって、ほんとの意味の支援じゃないんじゃないかと思っています。その人は支援を待つことでしか豊かになれないので。その人が1人で自立できる状態にするのが本当の意味での支援なのかなと思っています。
技術やノウハウを教えることで、自分で何かを作ったり、生計を立てたりという選択肢を持てるようにしていきたいです。」

いつまでも、8clotHらしく続ける

「全国展開をしたり、どんどん事業を大きくして広めて行けばいくほど、自分の手から離れて行ってしまいます。そうすると僕にしかできないことができなくなってしまうので、多分それはしないと思います。

「一番のうちの強みは企画力です。自分のできる限りでお客さんの想いに応えつつ、提案していくっていうスタイルはずっと続けていくかなと思います。」

「現在、販売から生産管理までを一人で担当している社員を雇っていて、将来、自分でお店を持ちたいと言っています。そういうふうに将来自分で何かやりたいっていう人が勉強のために8clotHに入って働き、経験を積む場になるのもいいかなと考えています。
そして8clotHを卒業して独立していった時に、8clotHの考え方や理念がいろんな方面に広がっていったらいいかなと思います。

 

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